山や庭も冬枯れの時期、茶席ではどんな花でもてなすのでしょうか?炉の季節の代表格といわれるのが椿で、椿にはじまり椿に終わるといわれるほどです。その種類はたくさんあって、名前も茶人好みの趣きがあってなかなか興味深いものです。
椿が好まれるのは
椿は、冬の炉の季節によく使われます。茶の湯では、5月〜10月までを「風炉の季節」、11月〜翌年4月までを「炉の季節」と分けて、茶釜や茶道具を取り替えるなどして季節感を大切にします。
椿は中国から伝わってきましたが、日本でも常緑樹として古くから神聖な木として神社やお寺の境内によく植えられています。
こうしたことから椿は、茶人にも茶席の花として好まれてきました。そして多くの園芸品種がつくりだされ、「侘助」「有楽椿」「数寄」など風雅な呼び名があることからも知ることができます。
茶室の狭い空間にいれた一輪の椿は、寒さに耐えて春を待つ姿が見る人の心に残ります。
生花では開花した花を豪華に活けますが、茶席ではつぼみを用いてその楚々とした美意識を感じさせます。
代表的な椿
- 侘助(わびすけ)
晩秋から寒中にかけて、花は一重で小さく花びらの数が少なく、猪口のように半開状に咲きます。白、桃、紅色などがありますが、白侘助は茶室の花として好まれます。 - 初嵐(はつあらし)
白色で一重咲きの古典品種の椿。開花時期は10月〜3月。つぼみは長楕円形で、咲きはじめは先端に丸みがあり、開花すると筒咲きになります。秋咲きの椿として、照葉とともにあしらいます。 - 加茂本阿弥(かもほんなみ)
豪壮なつぼみと美しい葉の対称が椿のなかでも筆頭。開花時期は1月〜4月ごろ。つぼみの先端に三頭裂の雄しべがみえるのが特徴。別名「窓の月」と呼ばれ、白一重で丹精な存在感があります。つぼみが少し開くと大きな黄色い雄しべがみえます。 - 有楽椿(うらくつばき)
有楽椿は、織田信長の弟である織田有楽斎が茶花として愛用したことからこの名がつけられたといわれます。開花は時期は12月〜4月と、長い時期楽しめます。 - 白玉(しらたま)
京都で江戸時代から栽培されてきた品種です。開花時期は10月〜3月。名のとおり全体に丸い形をしていて、濃い緑の葉の中から淡い白色の花をつけます。ぷっくりとしたつぼみは愛らしく、茶席でも格のある椿です。 - 藪椿(やぶつばき)
藪椿は、北海道以外の日本全国の広い地域に自生していて、椿の原種です。一重と八重があり、大輪から小輪まで花色や形に千差万別の品種があります。道路の植え込みや椿園などで見かけることがあります。椿とさざんかはよく似ているので間違えやすいのですが、花が散る時の違いがあり、椿は花全体がぽとんと落ちますが、さざんかは花びらが1枚ずつ散っていきます。
このほかにも椿には、西王母、数寄屋、曙、太神楽、都鳥、都鳥、赤侘助、八朔、永楽、衣笠、日光、聚楽、春曙紅、雪舟、日の丸……など、まだまだ数えきれないほの種類があります。日本中でそれだけ愛好家に愛されているのがうかがえます。
2000種類あるともいわれる椿は、なかなか名前をいいあてられないものです。茶席でわからない時は、亭主に聞いてみるといいでしょう。名前や由来がわかると、そこからまた会話が広がります。
椿に添えたい枝もの
椿にあわせて枝ものを添えることがあります。11月なら照葉ですが、どんな枝ぶりりものを選ぶかがポイント。これから開花を迎える椿と散りゆく照葉の取り合わせは、変化があって絵になります。
- 万作(まんさく)
マンサク科の落葉木。山野に自生していますが、花が美しいので庭園にも植えられます。葉が大きく晩秋の照葉はひときわです。
- 楢(なら)
ブナ科の落葉木。初冬の霜が降りるころに美しく染まった照葉を茶席に用います。 - 結び柳
正月の初釜には、芽吹きを象徴する大きな結び柳と紅白の椿をいれて新年のことほぎをあらわします。
- 臘梅(ろうばい)
梅の花が咲く2月ごろに咲き、花の色が黄色く臘のような光沢があるのでこの名前があります。落葉低木で、花は葉の出る前に下向きに咲く特徴があります。つぼみのころがもっとも風情があり、茶花では椿と用います。 - 三叉(みつまた)
和紙の原料として古くから山間地で栽培されています。茎が直立し、枝が3本ずつに分かれるのでその名で呼ばれます。高さは1〜2mくらいになり、花の色は黄色、早春に葉のでる前に咲きます。野趣があり、冬の茶花としてつぼみを用います。
‹花のある暮らしのすすめ›
日ごろ忙しくて花をいける余裕がないというとき、花のお届け便は助かります。お友達やご家族の記念日にも、あなたの気持ちを届けてみませんか?
まとめ
茶花というとむずかしいと思うかもしれませんが、それは人々に古くから親しまれてきた花でもあります。四季折々、暮らしの中に一輪の花を楽しみましょう。