焼き魚にシュッと絞るだけで、秋の香りを感じさせてくれるすだち。薬味に使うだけの脇役と思いきや、果汁だけでなく果皮にもカリウムやビタミンCなどがレモン以上に含まれているとわかっておどろき。そうとなれば捨てるのはもったいない、果皮も料理に活用しましょう。そこで、今回はすだちの栄養素とおいしい食べ方をご紹介します。
すだちの旬と栄養素
旬は短い
すだちはミカン科ミカン属の香酸柑橘類です。ゆずの親戚ともいわれ江戸時代に徳島県で生まれました。さわやかな酸味とすがすがしい香気で、秋の食卓には欠かせません。
露地ものの旬は、8月末〜10月中旬までと短期間。ハウスものは1年を通して出回っていますが、やはり旬の時期のすだちは風味も格別です。
「すだち」と「かぼす」はよく間違えますが、すだちはかぼすより小さいピンポン球くらいで、皮もうすく、果汁がたっぷり含まれています。すだちは全国の生産量の98%が徳島で生産されています。一方、かぼすは大分県の特産品です。
松茸の土瓶蒸しに添えられているのがすだちといえば、わかりやすいかもしれません。
黄色く熟す前の青いうちに収穫するので、苦味がなく香りがさわやか。焼き魚やかつおのたたき、鍋などに絞って薬味として使います。
2つ割りにするときはヘタを横にして切ると、果汁がたっぷりしぼれます。
すだちvsレモンの栄養素は
上の表は、「すだち果汁・すだち果皮」vs「レモン果汁・レモン全果」の成分比較表です。
柑橘類に含まれるビタミンCを比べてみると100gあたり、すだち果汁40mg、すだち果皮110mgと、レモンより多くのビタミンCが含まれていることがわかります。
また、レモンと比べてカルシウム・カリウムが2.5倍もあり、ビタミンAも豊富です。果皮のほうにもこんなにたくさんの栄養素が含まれているのはおどろきです。
果汁をちょっと絞ったあとは捨てるという人、ちょっと待ってください。皮を薄く切ったりおろしたりして肉や魚料理にふりかけて食べると、さまざまな健康効果が期待できますよ。
皮は刻んだり、すりおろして、肉や魚の香味料にするとより多く摂取することができます。
すだちの効能
- シミの原因メラニンを抑制
すだちの果皮にはビタミンCやカリウムが多く含まれていて、美肌のもとコラーゲンをつくるのに不可欠です。活性酸素を分解して、シミの原因になるメラニン色素の沈着を抑える働きもあります。
また、抗酸化作用の働きをするビタミンA(β-カロテン)も含まれていて、アンチエイジングや皮膚や粘膜を丈夫にしたり、視力の維持などにも効果が期待できます。
- 生活習慣病に効果
すだちの皮にはスダチチンというポリフェノールの一種が含まれていて、内臓脂肪を落とす効果があることがわかってきました。徳島大学などの研究結果によると、スダチチンを与えなかったマウスと与えたマウスを比べると、与えたほうは脂肪の蓄積が抑制され、エネルギーの消費量が高まったことが確認されています。
また、スダチチンには抗酸化作用もあり、生活習慣病をもたらす体の酸化を抑え、がんの発症を防ぐ効果も。このほか、糖尿病の予防、アルツハイマー病の予防にも効果があるといわれています。
- 疲労回復にも
クエン酸は柑橘類に含まれるすっぱい成分で、すだちにはレモンの1.5倍、ミカンの4倍以上含まれています。
この酸味成分が体内で糖を代謝し、疲労物質の乳酸を水と炭酸ガスに分解してくれます。体内に入ったマグネシウムやカルシウムなどを吸収しやすくして、風邪の予防や疲労回復に役立つといわれています。
また、余剰の糖分やグリコーゲンを分解し脂肪として蓄積されるのを防いでくれます。
ちなみに、中世のヨーロッパでは柑橘類は薬用として使われていたそうです。種類によって、生で食べるな、食事の最初に食べよ、など細かい決まり事があったとか。
実だけでなく果皮を食べることで、さまざまな健康維持につながる自然のパワーに感謝したいですね。
おいしい食べ方
すだちは皮に苦味がないので、スライスしたり、すりおろしたりして、そーめんや冷奴、湯豆腐、魚料理、肉料理にふりかけて食べるといっそう吸収されやすくなります。
山かけそーめん
材料
・そうめん……1束(50g)
・山芋……70g
・卵黄……1個分
・麺つゆ……お好みの量
・おろしたすだちの果皮……適量
つくり方
①山芋の皮をむいておろし、溶いた卵黄を合わせ、冷蔵庫で冷やします。
②そーめんを茹で、水でしめます。①をそーめんにのせ、上から冷たい麺つゆをかけ、おろしたすだちの皮をたっぷりふりかけます。
果皮は思ったほど苦味もなく香りがたち、そーめんとの相性はバツグン。つくってみての感想ですが、卵黄は入れなくてもよかったかも。山芋だけでも清涼感がただよって食欲をそそります。
すだち冷奴
豆腐のうま味を逃さないよう、薬味はすだちの果皮おろしだけでOK。お好みでだし醤油をかけると、酒の肴にもいけます。
材料
・豆腐……1/2丁
・だし醤油……適量
・おろしたすだちの果皮……適量
つくり方
半丁に切った豆腐を皿にのせ、おろしたすだちの果皮をたっぷりかけてできあがり。とうふとすだちの香りが口中で広がり、料亭風の冷奴に仕上がります。
すだちジュース
材料
・炭酸……180cc
・はちみつ……大さじ1
・すだち……2個
・氷
つくり方
①すだち2個分の果汁を絞り、果皮もりんごの皮を剥くように削ります。
②氷を入れたグラスに、はちみつ、すだち果汁、果皮、炭酸ソーダを入れます。
すぐ飲んでもいいのですが、30分ほど冷蔵庫で寝かしておくとすだちの果皮から成分が抽出され、より濃厚な香りが楽しめます。
このほかの食べ方
揚げ物などに果皮をふりかけたり、お酒を割るときに使っていただいたりしてみてください。
塩すだちを塩レモンをつくる要領でつくっておきましょう。果皮ごと輪切りにしたすだちを塩漬けにし、1 週間ほど寝かせると、肉料理などに幅広く使えます。
また、輪切りに切ったものを瓶に入れ、はちみつやシロップで漬け込んで香りがついたら、お水や炭酸水などで割って飲んでください。
このほかにも、酢の代わりにいろいろ使うと、酢よりまろやかに仕上がります。
保存方法
長期保存するときはビニール袋に入れ、野菜室で保存すれば1ヶ月くらい持ちます。